PIRとPCRの違いとは?再生プラスチックの現場で最初に覚える言葉

「今日のロットはPIRだから、色はそろってるはずだよ」。
樹脂の現場に移って最初の週、先輩にこう言われて、私は何のことかわからないままうなずいていました。

はじめまして、若林健吾です。
市原市の姉崎で生まれ育ち、京葉臨海のコンビナートで協力会社の設備保全を15年やってきました。
40歳のときに樹脂の粉砕と成形のラインへ移り、いまはラインリーダーをしています。

配管やポンプの言葉ならひと通りわかるつもりでいました。
ところが樹脂の現場では、PIR、PCR、リペレット、MFRと、聞いたことのない略語が毎日のように飛び交います。
とくにPIRとPCRは、取引先との会話にも出てくるので、あいまいなままだと困る場面が多い言葉でした。

この記事では、再生プラスチックの仕事に就いたばかりの人や、これから樹脂関係の職場を考えている人に向けて、PIRとPCRの違いを現場目線で整理します。
規格ではどう定義されているのか、なぜ間違えやすいのか、一緒に覚えておくと楽になる言葉は何か、という順番でお話しします。

PIRとPCRをひと言でいうと

まずは大まかな区別からです。
どちらも再生プラスチックの原料の「出どころ」を表す言葉で、材質の名前ではありません。
PPのPIRもあれば、PPのPCRもあります。

PIRは「工場から出たプラスチック」

PIRは「ポスト・インダストリアル・リサイクル」の略で、製品をつくる工程で出た端材や不良品を原料にしたものです。
成形のときに出るランナー、色替えでできた不良品、使われないまま残った原料などがこれにあたります。

一度も消費者の手に渡っていないので、汚れが少なく、どの材料なのかもはっきりしています。

PCRは「一度使われた製品から出たプラスチック」

PCRは「ポスト・コンシューマー・リサイクル」の略です。
家電や容器など、製品として使われたあとに回収されたプラスチックを原料にしたものを指します。

こちらは使われてきた履歴がある分、ラベルやネジ、汚れ、別の樹脂がくっついて入ってきます。
同じ「再生材」でも、手間のかかり方がまるで違います。

違いを表にまとめると、次のようになります。

項目PIRPCR
出どころ製造工程(工場)使用済みの製品
身近な例ランナー、成形不良品、余った原料使用済み家電の外装、回収した容器
汚れや異物少ない多い
材質のわかりやすさわかっていることが多い混ざっていることが多い
品質の安定安定しやすいばらつきやすい

略語の後ろの「R」は、「リサイクル(Recycle)」と書く会社もあれば「リサイクルド(Recycled)」と書く会社もあります。
どちらで書かれていても、指しているものは同じだと考えて大丈夫です。

規格では「プレコンシューマ材料」「ポストコンシューマ材料」と呼ぶ

書類や規格の世界では、PIRとPCRという略語より、「プレコンシューマ材料」「ポストコンシューマ材料」という言い方が正式です。
もとになっているのは環境ラベルの規格であるJIS Q 14021で、国際規格のISO 14021に対応しています。

この定義は、厚生労働省が出している食品用器具及び容器包装の製造に用いる合成樹脂の原材料としてのリサイクル材料の使用に関する指針に、JISの文言のまま載っています。
要点を抜き出すと、次のとおりです。

  • プレコンシューマ材料:製造工程における廃棄物の流れから取り出された材料(同じ工程で再使用できる不適合品やスクラップの再利用は除く)
  • ポストコンシューマ材料:家庭や、エンドユーザーとしての施設から、本来の目的に使えなくなった製品として出てくる材料(流通経路から戻される材料を含む)

実務では「PIR=プレコンシューマ」「PCR=ポストコンシューマ」とほぼ同じ意味で使われています。
取引先によって呼び方が変わるだけなので、両方の言い方をセットで覚えておくと会話に困りません。

いちばん間違えやすいのは「自分の工場の粉砕材」

私が最初に勘違いしていたのが、ここです。

うちのラインでは、成形で出たランナーを粉砕機にかけて、同じ成形機に少しずつ戻して使っています。
工場の中で出たものを再利用しているのだから、これもPIRだろうと思い込んでいました。

ところが、先ほどの定義には「同じ工程で再使用できるスクラップの再利用は除く」という一文がついています。
つまり、自分の工程で出たランナーを、そのまま同じ工程に戻すのは再生材として数えません。
工場の中での歩留まり改善、という扱いです。

エコマークの基準でも同じ考え方がとられています。
エコマーク商品類型No.118「プラスチック製品」の認定基準書では、プレコンシューマ材料から「原料として同一の工程(工場)内でリサイクルされるもの」を除くと書かれています。

もし工程内の再利用まで再生材に数えてよいとすると、不良を多く出す工場ほど「再生材をたくさん使っている」ことになってしまいます。
そう考えると、この線引きには納得がいきました。

では、どこからがPIRになるのか。
わかりやすいのは、工場の外に出て、再生の工程を通ったものです。
端材を再生業者が買い取り、選別や粉砕、ペレット化を経て、別のメーカーの原料になる。
こういう流れで生まれた材料が、PIRとして扱われます。

環境省の令和4年度の調査報告書には、製品メーカーへの聞き取りとして「プレコンシューマ材は社内工場から発生したものではなく、外部から購入している」という回答が載っています。
メーカーの側から見ると、PIRは自分の工場の中で完結するものではなく、外から仕入れる材料だということがよくわかります。

PIRとPCR、扱ってみると何が違うのか

言葉の区別がついたところで、現場で感じる違いの話をします。

PIRは素性がわかっている

PIRのいいところは、何の樹脂で、どんなグレードかが最初からわかっていることです。
元の製品をつくった工場から出てくるので、汚れも少なく、ロットごとの差も小さい傾向があります。

成形する側からすると、条件をあまりいじらずに使えるのがいちばん助かります。
冒頭の先輩の「色はそろってるはず」という言葉も、この安心感から出たものでした。

PCRは選別と洗浄に手間がかかる

PCRは、使われてきた製品が原料です。
同じ家電の外装でも、メーカーや年式によって樹脂の配合が違いますし、塗装やラベル、金属の部品もついてきます。

環境省の自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプランでも、再生プラスチックには「物性の劣化や臭いの問題、意匠に関わる着色並びに品質のバラツキなどの問題がある」と書かれています。

現場の感覚でいうと、PCRで苦労するのは次のような点です。

  • ロットによって流れやすさが変わり、成形条件の調整が増える
  • 小さな異物が黒い点になって製品に出る
  • 元の製品の色が混ざり、明るい色に仕上げにくい
  • 保管していた環境によっては、臭いが残る

どれも、選別と洗浄をどこまで丁寧にやるかで差が出ます。
PCRを扱う再生業者の腕が問われるのは、この部分です。

それでもPCRが求められる理由

手間がかかるのに、なぜPCRを使いたいという声が増えているのか。
理由は、世の中のごみを減らす効果がPCRのほうが大きいからです。

先ほどのエコマークの基準書では、多くの製品区分で必要な再生材の割合を、プレコンシューマ材料なら50%以上、ポストコンシューマ材料なら25%以上としています。
両方を混ぜて使うときは、ポストコンシューマ材料の重さを2.0倍して計算します。
同じ1kgでも、PCRのほうが倍の価値として数えられているわけです。

環境省のアクションプランでも、自動車向けの供給量目標は「PCR(ポストコンシューマーリサイクル)を対象としており、PIR(ポストインダストリアルリサイクル)は含んでいない」と書かれています。

一方で、2026年4月に施行された改正資源有効利用促進法の施行令では、対象になる再生プラスチックを「使用済物品等又は副産物」からつくったプラスチックとしています。
製造工程で出る副産物も含まれるので、この制度ではPIRも再生プラスチックとして扱われます。

同じPIRでも、制度や基準によって扱いが変わります。
取引先から「PCR比率は何%?」と聞かれることが増えたのも、こうした流れがあるからだと感じています。

一緒に覚えておきたい現場の言葉

PIRとPCRのほかにも、再生プラスチックの現場では毎日のように使う言葉があります。
私が最初の数か月で覚えたものを挙げておきます。

  • バージン材:一度も再生の工程を通っていない新品の樹脂
  • 粉砕品:プラスチックを細かく砕いたもの。洗って乾かしたものはフレークと呼ぶこともある
  • ペレット(リペレット):粉砕品を溶かして、米粒くらいの粒にそろえた再生原料
  • リグラインド:成形工程で出たランナーや不良品を粉砕した材料。同じ工程に戻すものは再生材に数えない
  • MFR:溶かした樹脂の流れやすさを示す数字。ロットごとの品質を確かめるときによく見る
  • コンタミ:異物や別の樹脂が混ざること。再生材でいちばん気を使うところ
  • マテリアルリサイクル:プラスチックを材料のまま再利用すること。燃料にしたり化学的に分解したりする方法とは区別される

PIRもPCRも、このマテリアルリサイクルの原料にあたります。
では、日本でマテリアルリサイクルに回っている量はどのくらいなのか。

一般社団法人プラスチック循環利用協会の2024年のマテリアルフロー図によると、2024年の廃プラスチックの総排出量は911万t、そのうちマテリアルリサイクルは180万tでした。
同じ資料では、樹脂をつくったり加工したりする段階で出る生産・加工ロスが60万tとされています。

製品になる前の段階で出るプラスチックだけでも、これだけの量があります。
一方で、燃やしてエネルギーとして回収する割合のほうがずっと大きく、材料として生かされる量はまだ限られています。

PIRとPCRを両方扱う会社の例:日本保利化成株式会社

言葉だけではイメージしにくいので、PIRとPCRの両方を原料にしている会社を一つ紹介します。
群馬県太田市に本社工場がある、日本保利化成株式会社です。

この会社の名前を知ったのは、地元の姉崎に関係があったからでした。
国税庁の法人番号公表サイトの変更履歴を見ると、2018年から2022年8月まで、市原市姉崎海岸に本店を置いていた時期があります。
いまの本社工場は太田市です。

公式サイトによると、事業は廃プラスチックのマテリアルリサイクルです。
工場から出る廃プラスチック(PIR)と、家電製品などの使用済みプラスチック(PCR)を有価で買い取り、再生ペレットをつくっています。
ABS、PP、PC、PAなど、50種類以上の樹脂の再生に対応しているそうです。

買取案内のページには、加工の流れが数字つきで載っています。

工程内容
材質確認・選別異物除去、難燃性・耐熱性・塗装の有無などの確認
破砕金属の残りを取り除きながら8cm程度に砕く
粉砕約1.5cm程度まで細かくする
ペレタイジング溶かして粒状の再生ペレットにする
充填フレコンまたは25kgの樹脂袋に詰める

機械にかける前に人の目で異物をチェックする、とも書かれています。
PCRを扱う以上、最初の選別がいちばん大事になるのは、現場にいる身としてよくわかります。

また、2025年4月には、PCR材でつくったペレットについて、再生材の国際認証であるGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)を取得したとお知らせしています。
PCR由来であることを第三者の目で示せるようにしているのは、PCRの比率を問われるいまの流れに合った動きだと思います。

再生プラスチックの仕事に興味が出てきた方は、日本保利化成株式会社の採用情報ページもあわせて見てみてください。

まとめ

PIRとPCRの違いは、原料の出どころの違いです。

  • PIRは製造工程から出た材料で、規格上はプレコンシューマ材料
  • PCRは使用済みの製品から出た材料で、規格上はポストコンシューマ材料
  • 自分の工程で出たランナーを同じ工程に戻すのは、再生材に数えない
  • PIRは品質が安定しやすく、PCRは手間がかかる分、環境面で高く評価される

私自身、この区別がついてから、取引先との会話や材料の受け入れがずいぶん楽になりました。
「このロットはどこから来た材料なのか」を意識するだけで、成形条件を見直すときの見当もつけやすくなります。

再生プラスチックの現場は、覚える言葉が多くて最初は戸惑うかもしれません。
それでも、一つずつ意味がわかってくると、仕事の見え方がはっきり変わります。
この記事が、新しい職場に踏み出すときの手助けになればうれしいです。