「どうして東京を離れたの?」 そんな質問を受けるたびに、私は新潟の冬景色を思い出します。
雪の匂い、冷たい空気、そして部屋いっぱいに広がる炊きたてのお米の香り。
あの瞬間が、都会の暮らしを飛び出すきっかけだったんです。
「もったいない」「不便じゃないの?」と周囲には散々言われました。
でも私にとっては、新潟への移住はただの引っ越しではありません。
価値観も生き方も変える、大きな転機でした。
ここでは、私が「なぜ新潟?」と聞かれ続けた答えを余すところなくお話しします。
都会を捨てるのではなく、新しい扉を開く感覚。
そんな私の体験が、あなたの未来を考えるヒントになれば嬉しいです。
Contents
移住前の私:東京での葛藤と憧れの間で
コロナ禍で見えてきた都会生活の限界
コロナ以前の私は、東京で食品メーカーのコンテンツマーケティングに携わっていました。
華やかな仕事に見えるかもしれませんが、毎日終電ギリギリの生活。
外食やテイクアウトが増えるほど、食への関心もどこか空虚になっていく気がしました。
コロナ禍の在宅勤務で、急に生活リズムが変わります。
「このままの生活で本当にいいの?」と自問する時間が増えました。
豊かさとは何か、食を仕事にしているのに、自分自身が味わっていないのではないか。
そんな思いが頭を離れなくなったんです。
新潟との最初の出会い:学生時代のホームステイの記憶
実は私、新潟に足を踏み入れたのは大学生の頃が初めてでした。
あるゼミのフィールドワークで、農家にホームステイをする機会があったんです。
稲刈りを手伝い、雪解け水が流れる田んぼの風景に息を呑み、そこで食べるご飯に衝撃を受けました。
東京に戻るとすぐに日常へ埋もれてしまったけれど、あの時の記憶はずっと私の中に残っていました。
炊きたてのご飯の香りと、「うちの米は今年もいい出来だよ」と笑っていたおばあちゃんの笑顔。
思い返すたびに、心がほっと温かくなったんです。
デジタルワークと地方暮らしの可能性を探って
コロナ禍の混乱の中、オンライン会議やリモート編集が当たり前になりました。
「これなら、東京じゃなくても働けるかも?」
そう思うと同時に、どこに住みたいかを考える時間が増えます。
- 自分が本当に満たされる環境とは何か
- 東京の便利さと地方の豊かさの違い
- これからの社会で必要とされる働き方
そんな問いを抱えながら、私は「新潟」というキーワードを何度も思い浮かべていました。
食と自然、そして温かい人々の存在。
当時は漠然とした憧れでしかなかったけれど、心の奥で「ここに行けば変われるかも」と感じていたんです。
新潟を選んだ決定的な理由
「食」という宝物:米・酒・発酵文化との出会い
私は食に関わる仕事をしていたのに、いつの間にか「本物の味」を味わう喜びを忘れていました。
新潟の米、日本酒、発酵食品――そのすべてが私にとっては新鮮な宝物。
雑誌やSNSで見るだけでは伝わらない香りや温度感が、現地にはありました。
💡 ワンポイントアドバイス
食の魅力を探るなら、実際にその土地に足を運んでみること。
香り・温度・人との会話など、五感フル稼働で知る情報こそが生きた知識になるんです!
東京ではなかなか出会えなかった小さな酒蔵の「限定酒」を味わうたびに、私の心は解きほぐされていきました。
「これを発信できたら、多くの人が喜ぶはず」とワクワクが止まらなかったんです。
四季のリズムが生み出す心の豊かさ
新潟には四季がはっきりとあります。
雪の景色に圧倒される冬、桜が舞い散る春、緑鮮やかな夏、そして実りの秋。
都会での暮らしは、季節の変化を感じる余裕を削ってしまいがちでした。
四季とともに暮らすことは、リズムを取り戻すこと。
朝は「どんな景色だろう?」とカーテンを開け、夜は季節ならではのイベントや食材を楽しむ。
そのルーティンが、いつしか私の生活を彩る大きなポイントになりました。
予想外の出会いが広げた可能性:地元クリエイターとの交流
移住を考え始めてから、新潟のクリエイターとオンラインイベントで繋がる機会が増えました。
農家さんや地域の工芸作家さんとコラボしながら、新しい商品やイベントを作っている人がたくさんいるんです。
彼らと話すたびに、「自分も何か一緒にできるかも」と胸が躍りました。
東京では得られない距離感がそこにはありました。
プロ同士なのに、何だか家族のように支え合っているんです。
都会のビジネスライクな関係とは違う、あたたかくて自由な場がそこには広がっていました。
東京では得られなかった「ちょうどいい距離感」のコミュニティ
東京にいるとどうしても「人が多すぎる」と感じることが多かったです。
情報も人間関係も溢れていて、プライベートを守るのにもエネルギーが必要。
でも新潟では、ほどよい距離感で人と関わることができました。
- 一人の時間はしっかり確保できる
- でも、助けてほしい時にはすぐ近くに仲間がいる
- コミュニティ同士が緩やかにつながっている
そんな絶妙なバランスが、私が新潟を選んだ最大の理由と言ってもいいかもしれません。
移住1年目の衝撃と気づき
雪国暮らしの想像以上の厳しさと美しさ
「雪が降る」という言葉では片付かないほど、新潟の冬はドラマチックです。
何もかもを覆い尽くす雪は、幻想的な美しさもあれば、生活を不便にする苛酷さもあります。
朝起きたら玄関が埋まっていた、なんてこともありました。
でも、その厳しさがあるからこそ、春の温かさには感動が待っています。
雪解けとともに芽生える植物や、畑で光る新緑のようすは、まるで命の息吹そのもの。
この両極端さが、新潟の魅力をさらに際立たせていると感じました。
地域おこし協力隊として直面した現実
私は移住当初、地域おこし協力隊として活動していました。
地元の農家さんに取材したり、イベント運営を手伝ったり。
外から見ると楽しそうですが、実際は課題も山積みです。
- 農家さんの高齢化と担い手不足
- 若い世代にとっての就労機会の少なさ
- 雪によるインフラの負担
「よそ者」の私に何ができるのかと悩む瞬間もありました。
でも、その葛藤こそが私に「自分なりの役割」を模索させる原動力になったんです。
「よそ者」から「つなぎ手」へ:立ち位置の変化
最初は「東京から来た人」として見られがちでした。
だけどイベントを企画したり、SNSで地元の魅力を発信したりするうちに、少しずつ呼び方が変わってきます。
「美咲ちゃんに聞いたら面白そうな人を紹介してくれるかも」なんて言われるようになりました。
🔍 これだけは押さえよう
地方に飛び込むときは、「完璧な計画より行動」が大事。
まずは小さなイベントや取材を通じて顔を広げ、地元の人との信頼関係を積み重ねてみましょう。
外から来た私だからこそ、内側と外側をつなげる橋渡しができる。
そんな手応えを感じ始めたのは、ちょうど移住して半年が過ぎた頃でした。
SNSを通じて繋がった新たな仲間たち
都会から地方へ移住すると、友人関係がガラッと変わります。
でも、SNSがある今は、物理的な距離を感じさせないつながりが持てるんです。
インスタグラムで投稿した雪国の写真に、「いつか新潟に行ってみたいです!」とコメントが来たり、
TikTokで紹介した地元の酒蔵の動画をきっかけに、新潟のファンが増えたりしました。
オンラインとオフラインを行き来するこの時代だからこそ、地方の魅力を世界に発信できる。
それを身をもって体験したのが移住1年目でした。
移住3年目で見えてきた新たな可能性
農家×デジタル:古代米栽培とオンライン発信の融合
今では私自身、プランターで古代米を育てています。
米農家さんに教わりながらSNSで成長記録を配信することで、多くの人が興味を持ってくれました。
「都会のマンションでも米が育つんだ!」と驚いてくれる声もたくさん届きます。
この経験から、農業とデジタルのコラボはまだまだ可能性が広がると実感しました。
地域のプロダクトや技術をオンラインでシェアし、ファンを増やす仕組み。
そこに私のフードフォトグラファーとしての視点も活かせると感じています。
女性目線の日本酒文化の再発見
「日本酒って敷居が高い」という人が多いなか、新潟には女性杜氏や若い世代の醸造家が増えています。
彼らの取り組みを追いかけて発信していると、日本酒が苦手だった女性層からも反響がありました。
「こんなにフルーティーなお酒もあるんだ!」と驚く声が絶えません。
- 果物のような香りがする新タイプの日本酒
- シャンパンのようにシュワっとするスパークリング清酒
- おしゃれなボトルデザインでSNS映えする酒蔵の取り組み
新潟の酒文化に女性の感性が加わることで、新しい市場を作れると確信しています。
地元素材を活かしたフードフォトグラフィーの世界
フードフォトグラファーとして、新潟の豊かな食材は無限の被写体です。
例えば、旬の山菜を盛り付けたワンプレートや、雪室(ゆきむろ)で熟成させた野菜の鮮やかな色彩。
撮影するたびに、自然の芸術性に心を奪われます。
さらに、それらの写真や動画をSNSで共有すると、都会の人々が「食べてみたい」「作ってみたい」と反応してくれる。
自分が撮った1枚の写真がきっかけで、誰かの食卓が豊かになるなんて最高の喜びです。
二拠点生活者や関係人口との新しいネットワーク
「完全移住は難しいけれど、月に数回は新潟に来たい」
そんな二拠点生活者やリモートワーカーが増えています。
一緒に企画イベントをしたり、SNSを通じて情報を交換し合ったり。
これまでになかった多様なコミュニティが生まれています。
✔️ チェックリスト
- 自分に合った移住or二拠点生活のスタイルを考えてみる
- どんな人と繋がりたいかを明確にする
- SNSやオンラインコミュニティをフル活用する
これらを意識すれば、新潟での暮らしはもっと充実するはず。
私自身、二拠点生活の友人から刺激をもらいながら、自分の活動を拡大できています。
「移住」を超えた新しい生き方のデザイン
東京との関係の再構築:単なる「脱出」ではない選択
よく「都会に疲れたから逃げたんでしょ?」と言われることがあります。
でも実際は、東京で築いた人脈や仕事のスタイルを、新潟に持ち込みたかったんです。
コロナ禍で加速したリモートワークが、その後押しをしてくれました。
新潟にいながら東京のプロジェクトにも参加できるし、東京の友人が新潟に来るきっかけを作ることもできる。
ただ「抜け出す」だけではなく、新たな橋をかける感覚で両方の良さを取り入れています。
デジタルツールで実現する地方発のクリエイティブワーク
私が運営している「新潟クリエイティブハブ」は、県外のクリエイターやデジタルノマドが気軽に滞在できるプロジェクト。
高速Wi-Fiの整備から、撮影や編集に適したスペース作りまで、地域と連携しながら準備を進めています。
「地方だからできない」ではなく、「地方だから面白い」を合言葉に、次々と新しい挑戦を仕掛けています。
✅ 実践ステップ
- 地域の課題を拾い出し、デジタルで解決するアイデアを探る
- ローカルコミュニティと早めに連携して進める
- 成果や過程をSNSやブログでオープンに共有する
誰もが情報にアクセスできる時代だからこそ、地方に眠る可能性を発掘しやすいんです。
こうした取り組みが地方×デジタルの新しいスタンダードになるよう目指しています。
「新潟クリエイティブハブ」プロジェクトの挑戦
今、私は地元の若手醸造家や農家、工芸作家、そして県外からのクリエイターとつながり、新しい商品やイベントを試作中。
具体的には「雪国の日本酒を世界へ発信するオンラインプラットフォーム」や「伝統的な工芸品をモダンにリデザインする企画」など。
それらを「新潟クリエイティブハブ」という看板の下に集約しています。
ふと気がつくと、ここ新潟にいるのに世界とつながっている感覚。
それは地方にいながら国際的な可能性を感じられる、とてもエキサイティングな体験です。
雪国のウェルネスライフスタイル提案
新潟の冬は厳しいけれど、その反動で温泉やスノーボードなどの冬レジャーが楽しめます。
さらに「雪室貯蔵」という独特の技術を使い、食材をまろやかに熟成させる文化も根付いている。
こうしたウェルネスの視点を加えると、新潟は「心身をリセットする場所」として大きな魅力があると感じています。
都会の疲れを癒やすだけでなく、「雪」という自然の力を活かして新しい健康文化を生み出す。
それが私の考える、新潟流のウェルネスライフスタイルです。
まとめ
移住は「逃げ」というより、むしろ「飛び込む」行為だと私は思います。
都会の便利さから離れるのは勇気が要るけれど、その分見えてくる新しい景色や出会いがあります。
あの時の直感が、私を新潟へと導き、そして今の活動につながっているのです。
東京と新潟、どちらかを捨てるのではなく、両方の魅力を組み合わせる。
その実験を重ねてきた4年間で、私は食の奥深さや自然の力、人との絆の尊さに気づきました。
なぜ「新潟」なのかと聞かれたら、こう答えます。
「私にとっては、ここが一番ワクワクできる場所だから」と。
もしあなたが「自分の居場所」を見つけたいと感じたら、ほんの少し勇気を出してみてください。
オンラインでも、実際に足を運んでもいい。
新潟だけでなく、日本のどこかに、あなたを呼んでいる街があるはずです。
そしてその街での出会いや体験が、きっとあなたの人生を鮮やかに変えてくれます。